新宿心療内科・ゆうメンタルクリニック秘密コラム 「結婚式のミステリー」
新宿心療内科・ゆうメンタルクリニック秘密コラム
「結婚式のミステリー」
まずは、こんな話を聞いてください。
ある女子大学の教授であるアキヒコさんは、今年で68才になります。
彼は最近、今年その大学に入った女子大生、エリコさんと結婚しました。
50才もの年の差カップルに、二人の友人たちはビックリ。
アキヒコさんの友人の男性たちは「よくやるなぁ」「すごい…!」と声をかけます。
「う、うらやましくなんて、ない…!」と、声をしぼりだす男性もいました。
エリコさんの友人の女性たちは、「68才の男と結婚なんてして、何考えてるのかしら…」「夜なんか問題ないの…?」なんて心配しています。
それでもみんなが、二人の結婚を祝福しました。
しかし、その結婚式の途中。
どう見ても100才くらいの、よぼよぼのおじいさんが現れました。
「誰だろう…?」
みんながそう思ったとき。
おじいさんはエリコさんの手を握って、言いました。
「結婚おめでとう、ママ…」
驚くアキヒコさんは、エリコさんに聞きました。
「だ、誰!? こ、このおじいさん!?」
するとエリコさんは、ためらいながら、言いました。
「私が産んだ、息子です」
これは、どういうことでしょうか?
◆ 結婚式のミステリー。
というわけで、今のクイズ。
答えが分かりましたでしょうか。
まぁ、あの。
答えはシンプルです。
エリコさんは、118才でした。
アキヒコさんの50才年上です。
100才の老人は、もちろんエリコさんの息子です。
エリコさんに子供がすでにいたことを知って、アキヒコさんが驚いたわけです。
この問題には、いくつかのワナが隠されています。
いや、ワナというほどでもないと思うんですが、一応聞いてください。
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「今年その大学に入った女子大生、エリコさん」
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どう考えても、ここで18才を想像しますね。
うん。人間として当然です。僕も想像します。
しかし118才で大学に入学する女性だっているかもしれません。
元気なおばあさんならば。
それにおばあさんであっても、「女子大生」と呼ぶのは間違いとは言い切れません。
女性かつ大学生であるなら、女子大生であるはずです!
「いや! 女子というのは女の子という意味で、若くないとダメだ!」
と言い切る男性は、そこら中で開催されている「女子会」で、その主張を行ってください。間違いなく、女子たちに袋だたきにされると思います。
また「エリコさん」という名前から、やはり若い女性を想像するかもしれませんが、こちらもご高齢のエリコさんもいるという現実をご理解ください。
さらにワナは続きます。
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50才もの年の差カップルに、二人の友人たちはビックリ。
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「年の差カップル」、特に50才になると、やはり多くの方が、
「男性が年上、女性が年下」
を想像します。
でももちろん、逆だってありえるはずです。
「いや! 年の差カップルは、男が上という意味だ! 幼妻最高!」
という方は、全国の姉さん女房の前でその主張を(以下略)
そして続きます。
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アキヒコさんの友人の男性たちは「よくやるなぁ」「すごい…!」と声をかけます。
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「よくやるなぁ」「すごい…!」は、純粋に驚嘆です。
「すごい年上フェチなんだなぁ」的な。
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「う、うらやましくなんて、ない…!」と、声をしぼりだす男性もいました。
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通常、嫉妬のように思える発言です。
しかし本当に、うらやましくなかっただけかもしれません。
いえ、もしくは、この男性もすごい年上フェチで、やはり嫉妬しているのかもしれません。そうだ。それに違いない。
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エリコさんの友人の女性たちは、「68才の男と結婚なんてして、何考えてるのかしら…」「夜なんか問題ないの…?」なんて心配しています。
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男性の心配をしているように思えるかもしれません。
しかしまぁ、実際は、お互い、夜は少し問題ありそうなので。
というわけで、はい。
よろしければ、周囲の人に出してみてください。
「まったく答えが分からなかった!」
という方は、「年の差カップルといえば、必ず男が年上だ!」という考えに、
とらわれている可能性があります。
気をつけましょう。自分のことを棚に上げて。
◆ あなたは大丈夫?
ちなみにこのように、「○○ということは、▲▲に違いない」と思いこみを、心理学では「ヒューリスティックス」と言います。
このヒューリスティックス、もちろん大切です。
たとえば
「今度、女子大生と合コンだぜ!」
と言われたら、普通は「あ、若い女の子だ!」と思うはずです。
このときに、
「いや、女子大生といっても、118才の可能性もある! いったい何才なんだ! 教えてくれ! おい!」
と言ったら、それはかなり、空気の読めない人ということになります。
ものすごく生きづらい人生が待っているかもしれません。
人間は、さまざまなヒューリスティックスによって、色々な判断を効率よく行っているわけです。
ただこのヒューリスティックス、すべての人で、完全に一致しているわけではありません。
そのことを忘れてしまうと、痛い目にあいます。
たとえば「男女が二人で旅行に行く」。
これを「すなわちイコール、深い関係OK!?」
と思う人もいれば、
「いや、ただ旅行に行くだけで、それと深い関係は別」
と思う人もいるかもしれません。
同じように、
「デートの待ち合わせが23時」
ということで、
「高確率で終電を過ぎてしまうわけで、すなわちイコール、深い関係OK!?」
と思う人もいれば、
「いや、普通に終電前に帰るよ?」
と思う人もいます。
それぞれの「○○であるということは、▲▲である」という判断は、時に違う。このことを覚えておくといいかもしれません。
というか男性はほとんどの女性のトークを、勝手に
「ということは深い関係OK!?」
と思うので注意してください。ぶっちゃけ。
そう思っておけば、男女間の誤解はかなり減るはずです。
いずれにしても、「自分の常識は、必ずしも相手の常識ではない」ということを理解しておくだけで、予想外のトラブルが起きたときも、かなり対応しやすくなると思います。
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● 今回のまとめ。
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◆ 「○○であるということは、▲▲である」というのは非常に重要だけど、行きすぎると危険!
◆ たまには「相手はそう考えてないかも!」と思っておくだけでも、行き違いは減る!
どうか覚えておいてくださいね。
というわけで、いかがでしたでしょうか。
ちなみに自分自身は、飲み会で、初対面の女性に「精神科医です」と自己紹介すると、
「えー! 精神科医ってことは、何考えてるか何でも読めちゃうんですよねー! やだ、こわーい!」
とよく言われます。
あ、精神科医って、そういうヒューリスティックスなんだー。
そう思われたら、まぁ、しかたないのかな、とか思うわけですが。
隣にいた友人の精神科医は、こう言われていました。
「えー! 精神科医ってことは、何考えてるか何でも読めちゃうんですよねー! すごーい!」
うん、あれ?
さっきと違いません?
精神科医というより、僕自身のイメージによるヒューリスティックスだったようです。
切ない思い出に浸りつつも、ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)